社内の生成AIルール、最低限決める3つA4一枚から始める
分厚い規程を作る前に決めるべきは3つだけ。入力してよい情報、使ってよいアカウント、出力を確認する人。A4一枚に収まるルールの雛形と、運用に乗せる手順を解説します。
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- 著者
- シュン博士

結論から言えば、社内の生成AIルールは、分厚い規程を作り込む前にA4一枚を先に配るほうが早く効きます。最初に決めるのは3つだけです。
この記事は、生成AIの社内利用ルールを「これから作る」段階の会社に向けたものです。何をどこまで書けばよいかが決まらず止まっている状態を、A4一枚の雛形と、その紙を現場で回していく手順まで具体化します。
Why Now
規程づくりが長引くほど、現場は個人のアカウントで使い始める
生成AIは、会社が何も配らなくても個人で使えてしまいます。だから「全面禁止」か「検討中のまま放置」かの二択にすると、実態としては後者と同じ——会社が把握していない使い方が静かに増えていきます。
そこで第三の選択肢が、小さいルールを先に出して、使い方を会社の側に引き寄せるという進め方です。完成度より、配られている状態のほうが先に価値を持ちます。
導入全体の流れ(業務を選ぶ・試す・広げる)は生成AIの社内導入、何から始める?が正本です。この記事はその「ステップ2=ルールを決める」だけを掘り下げます。
3 Rules
最低限決める3つ|情報・アカウント・確認者
最初の一枚に載せるのは、この3つで足ります。逆に言えば、この3つが決まっていない状態でツール選定を進めても、現場は判断できません。

入力してよい情報/入力しない情報
最初に線を引くのは、AIに渡す前の段階です。顧客・従業員の個人情報、社外秘資料、未公開の情報、パスワードやAPIキー(外部サービスに接続するための鍵となる文字列)などの認証情報は、許可と安全な取扱いが明確になっていない限り入力しない、と決めておきます。
重要なのは、その先に「迷ったら入れない」を先に決めておくことです。ルールは必ず想定外に出会います。判断がつかないものを現場が自分で線引きせず、いったん止めて聞ける状態にしておくと、事故ではなく質問として上がってきます。
使ってよいアカウント・ツール
使うのは、会社が認めたツールと会社のアカウントだけにします。個人で契約したアカウントを業務に使うと、どの情報がどこに渡ったかを会社が追えなくなり、担当者が変わった時点で履歴も引き継げません。
あわせて押さえておきたいのが、同じサービスでも、無料版と法人向けの契約とで入力データの扱いが異なる場合があるという点です。ここはサービスごとに条件が違い、変更もされます。伝聞や記事ではなく、利用規約とデータの取扱いに関する記載、そして管理画面の設定を、導入時に自社で確認してください。
- 会社が認めたツールの一覧を、名前と用途で書く(増えたら追記する)
- 会社アカウントで使う。個人契約のアカウントでの業務利用は行わない
- 契約形態と、入力データの取扱いに関する記載を、導入時と契約更新時に確認する
出力を確認する人と観点
3つ目は、出てきたものを誰がどこまで見るかです。「各自で確認」と書くと、実際には誰も確認しません。業務ごとに確認する人を名前か役割で決め、見る観点を並べておきます。
観点は、事実・数値・固有名詞・相手先・公開可否の5つで足りることが多いです。AIは、もっともらしい文体のまま事実を取り違えることがあります。文章の読みやすさではなく、この5点を狙って見ると短時間で済みます。
最終責任は人にある、と1行で書く
「AIが書いたから」は社外に通用しません。出力をそのまま使わず、確認した人の責任で出す——この一文を紙に載せておくと、確認工程が省略されにくくなります。
Template
A4一枚のルール雛形
そのまま社内に配れる形にしたものが次の雛形です。空欄を自社の言葉で埋めれば、初版はその日のうちに出せます。完璧に埋まらない欄があっても、暫定版と日付を入れて配るほうが先に進みます。
A4一枚のルール雛形
【社内 生成AI利用ルール(暫定版)】 作成日: 年 月 日/次回見直し: 年 月 日 問い合わせ先: (部署・氏名) 1. 入力してよい情報・入力しない情報 入力してよい: 入力しない: 迷ったとき:入れずに上記の問い合わせ先へ相談する 2. 使ってよいアカウント・ツール 会社が認めたツール: 利用するアカウント: 禁止:個人契約のアカウントでの業務利用 3. 出力を確認する人と観点 確認する人: 確認する観点:事実/数値/固有名詞/相手先/公開可否 最終責任:出力をそのまま使わず、確認した人が負う
これは小さく始めるための雛形であり、法務・業界規制・各ツールの利用条件に応じた確認を置き換えるものではありません。自社の規程や取引先との契約に関わる部分は、必ず自社の判断と専門家の確認を経てください。設計の考え方は経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」も参照できます。
埋める順番に迷ったら、3つ目(確認する人)から先に決めると進みます。確認者が決まると、その人が扱える情報の範囲として1つ目が自然に決まるためです。
Operate
運用に乗せる手順
ルールは、配った瞬間ではなく、質問が返ってきて追記された時点で機能し始めます。作って終わりにせず、次の3段階で回します。
- PHASE 1
配って2週間使ってもらう
- PHASE 2
質問を集めて追記する
- PHASE 3
月1回15分で見直す
1段階目は、周知よりも実際に使ってもらうことが目的です。読み合わせの会議は開かず、A4一枚と問い合わせ先だけを渡します。2段階目で集めるのは意見ではなく、実際に迷った具体的な場面です。3段階目の見直しは15分で十分で、追記した項目を残すか、表現を短くするかだけを決めます。
現場から出てくる質問は、会社が違ってもよく似ています。答え方の例をあらかじめ持っておくと、その場で判断が割れません。
| よく出る質問 | 答え方の例 |
|---|---|
| 顧客名を伏せれば入れていいですか | 名前を消しても、案件の内容や金額から相手が分かることがあります。伏せ方が十分かを判断できないうちは入れず、問い合わせ先へ確認してください。 |
| 翻訳に使うのは大丈夫ですか | 翻訳も入力です。元の文章に社外秘や個人情報が含まれていないかを、渡す前に確認してください。 |
| AIが作った文章をそのまま送っていいですか | 社外に出るものは、確認する人が事実・数値・固有名詞・相手先・公開可否を見てから送ります。 |
| 自分のアカウントのほうが使い慣れています | 業務では会社のアカウントを使ってください。使いたい機能があれば、会社として契約できるかを検討します。 |
ルールが決まっても、どの業務から使えばよいかが決まらないことがあります。その場合は生成AIに任せる業務の見つけ方で、棚卸しから仕分けまでの手順をたどれます。
まとめ:規程より先に、一枚の紙を配る
社内の生成AIルールで最初に必要なのは、あらゆる場面を想定した規程ではなく、現場が今日から判断できる一枚です。入力してよい情報、使ってよいアカウント、出力を確認する人——この3つが書かれた紙が配られていれば、迷ったときに止まる場所ができます。
そして、その一枚は必ず不完全です。質問が出るたびに追記され、月に一度短く見直される紙のほうが、半年かけて作られた規程よりも実際の使われ方に近づきます。
Author
シュン博士
理学博士・AIエンジニア
実名・経歴は詳しいプロフィールでご覧いただけます。
参考資料
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