生成AIに任せる業務の見つけ方棚卸しの4条件と向き不向き
「何に使えばいいか分からない」を解く手順。1週間の業務棚卸しのやり方、任せる業務を選ぶ4条件、AIに向く仕事と向かない仕事の線引きを、判定シート付きで整理します。
- 公開日
- 更新日
- 著者
- シュン博士

結論から言えば、「AIで何ができるか」から探すと止まります。手元でくり返している作業から探すと決まります。
この記事は、生成AIを入れたいが対象業務が決まらない、という段階のための手順書です。1週間の棚卸しのやり方、任せる業務を選ぶ4条件の使い方、そしてAIに向く仕事と今は向かない仕事の線引きを、判定シートの形まで具体化します。
Why Cases Fail
事例集をいくら眺めても、自社の1つは決まらない
他社の事例は、その会社の情報の形と体制に合わせて成立しています。どんな資料がどの形式で揃っているか、誰が確認できるか、間違えたときに誰が気づくか——そこが違えば、同じ業務名でも同じようには動きません。
だから探す先は、他社の成功例ではなく自社の中で、毎週だれかが手で繰り返している作業です。それは資料も担当者も確認者も、すでに社内に揃っています。
導入全体の流れ(業務を選ぶ・ルールを決める・試す・広げる)は生成AIの社内導入、何から始める?が正本です。この記事はその「ステップ1=業務を選ぶ」だけを掘り下げます。
Inventory
まず1週間、手元の作業を棚卸しする
候補を出す作業は、会議室で考えるより、実際にその業務をしている人が1週間書き出すほうが早く、外れません。次の3つを順にやります。

1週間、くり返している作業を書き出す
書くのは管理職ではなく、担当者本人です。実際に手を動かしている人しか、どこで時間が溶けているかを知りません。3〜5人分あれば十分で、それ以上集めても判断は速くなりません。
対象は「毎回ほぼ同じ手順でやっていること」です。新しい企画や交渉のような一回性の仕事は、今回は外して構いません。
頻度・所要時間・使う材料を添える
作業名だけでは比べられません。それぞれに「週に何回か」「1回に何分か」、そして使う材料(どの資料を見ながらやっているか)を書き足します。
いちばん効くのは3つ目の材料です。参照する資料が特定できる作業は、AIに渡すものがはっきりしているので試しやすく、逆に「頭の中の経験」だけで進めている作業は、最初の1つには向きません。
「書く・整理する・要約する・形を整える」に印をつける
並んだ作業のうち、文章を書く・情報を整理する・長いものを要約する・形式を整える、のどれかに当てはまるものへ印をつけます。ここが生成AIの得意な領域で、最初の候補はほぼこの中から出ます。
印が5つ以上ついたら十分です。次のセクションの4条件で絞り込みます。
4 Conditions
候補を4条件で仕分けて、1つに絞る
印をつけた候補は、次の4条件で機械的に仕分けます。感覚で選ばず、条件をいくつ満たすかで並べ替えるのが要点です。
任せる業務を選ぶ4条件
- ✓ 定期的に発生する
- ✓ 入力情報を限定・匿名化できる
- ✓ 正誤を人が判断できる
- ✓ 間違っても公開前に戻せる
4条件それぞれの考え方は生成AIの社内導入、何から始める?で解説しています。ここでは、実際に候補を並べて判定する形に落とします。
棚卸しで出た候補を、次の形の表に写します。列は業務名・頻度・材料・4条件のうち満たす数・判定です。1行3分もかかりません。
| 業務名 | 頻度 | 材料 | 4条件 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 議事メモの要点整理 | 週3回 | 自分で取ったメモ | 4/4 | 最初の1つ |
| 定型メールの下書き | 週5回 | 過去の送信文 | 4/4 | 次の候補 |
| 提案書の構成づくり | 月2回 | ヒアリングメモ | 3/4 | 保留(頻度が低い) |
| 取引先への与信判断 | 月1回 | 決算資料 | 1/4 | 外す |
選ぶのは、満たす数がいちばん多く、かつ頻度が高いものです。同点なら頻度で決めます。週に何度も発生する作業のほうが、2週間の試行で判断材料が早く集まるためです。
満たす数が3以下の業務を「できない業務」と決めつける必要はありません。今回の1つ目に選ばない、というだけです。
Fit
向いている仕事・今は向かない仕事
仕分けの精度を上げるために、線引きの目安を持っておくと迷いません。境目は「間違いに人が気づけて、出す前に直せるか」の一点です。
| 向いている仕事 | 今は向かない仕事 |
|---|---|
| 長文や記録の要約 | 採用・与信・契約などの最終判断 |
| メールや文書の下書き | 一次情報の代わりに事実を尋ねること |
| 情報の整理・並べ替え | 社外への最終回答をそのまま出すこと |
| 社内向けの言い換え・表現調整 | 法令・業界規制への対応を判断すること |
| 箇条書きから表への形式変換 | 確認できる人が社内にいない領域の作業 |
右の列に共通しているのは、間違いが出た時点ではもう戻せない、あるいは間違いに社内の誰も気づけない、という性質です。特に「事実を尋ねる」使い方は要注意で、生成AIはもっともらしい文章の形で誤りを返すことがあります。事実は一次情報で確かめ、AIには手元にある資料を渡して整理してもらう、という向きにすると安全です。
「今は向かない」は、永久に使えないという意味ではありません。確認できる人と確認の手順が整うまでは外しておく、という意味です。体制が整えば、右の列から左の列へ移る業務もあります。なお、ここに書いたのは業務選定の考え方であり、法務・業界規制に関する判断を置き換えるものではありません。
入力してよい情報や確認者の決め方は社内の生成AIルール、最低限決める3つに雛形付きでまとめています。
Pick One
最初の1業務を決めるチェック
棚卸しができた
- □ 担当者本人が1週間分の繰り返し作業を書き出した
- □ 各作業に頻度・所要時間・使う材料を添えた
4条件で仕分けた
- □ 候補を表に写し、満たす条件の数を数えた
- □ 満たす数と頻度で並べ、1つに絞った
担当者と確認者を決めた
- □ その業務を実際に試す人を決めた
- □ 出力を確認する人と、確認する観点を決めた
まとめ:探すのは事例ではなく、自分たちの手作業
最初の1業務が決まらないのは、選択肢が少ないからではなく、探す場所が外にあるからです。他社の事例を集める時間を、担当者が1週間分の手作業を書き出す時間に置き換えると、候補は自然に社内から出てきます。
そこから4条件で機械的に仕分け、いちばん多く条件を満たし、いちばん頻度の高い1つを選ぶ。選んだあとは、担当者と確認者を決めて2週間試すだけです。1つ動けば、次の候補はすでに同じ表の中に並んでいます。
Author
シュン博士
理学博士・AIエンジニア
実名・経歴は詳しいプロフィールでご覧いただけます。
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